「正社員と非正社員の格差 「新しい資本主義」では解決しない」の感想

はじめに

表題の記事の感想を記載したいと思います。

尚、引用元は以下です。

正社員と非正社員の格差 「新しい資本主義」では解決しない

引用内容

 岸田文雄首相の掲げる「新しい資本主義」の理解が今一つ深まらない。総理のさまざまな場面での発言を踏まえると、これまでの経済運営で解体されつつある中間層の再生を目指すものであるらしい。

 ただし、そのための手段が再分配政策であるのには注意が必要だ。

再分配政策は一時的効果しかない

 再分配政策は一時的に効果を上げることがあるにしても、再分配のための原資がなければ、永続したものにはなり得ない。つまり、ピザの配分に不公平がある場合には、一度切り分けたピザをもう一度切り分け直せば、平等な分け方にはなるかもしれないが、ピザを食べてしまえばそこでお終い。次にもっと大きなピザを焼かない限り、私たちは従前と同じ大きさのピザの分け前にしかありつけないのと同じ理屈だ。

 日本経済というピザを大きくしない限り、つまり日本経済を成長させない限り、私たちは豊かにはなれないのだ。そして、日本のような少子高齢化、人口減少が続く経済にあっては人、つまり労働力こそが有効活用すべき稀少な資源と言える。

構造改革の経済学的意味

 資源の効率的利用に威力を発揮するのが「市場」である。市場メカニズムの活用というと、小泉純一郎竹中平蔵流の構造改革路線を想起する読者もいらっしゃるだろう。

 そもそも、市場メカニズムを活用することで、価格をシグナルとして需要と供給が調整され、政府に指図されなくとも、消費者や生産者が利己的に振舞っていても、必要なところに必要なだけ資源が配分されていく。社会全体では、知らない間に稀少資源の効率的な利用が進み、国民の経済的な満足度が最大化されていく。このときに重要なのが、いかに経済学的に不必要な規制を減らしていくかということである。

 少子化、高齢化、人口減少が続く日本経済にあって稀少性が増す資源は労働力である。枯渇する労働力を斜陽産業から成長産業へ移動させられるかが、持続的な成長のカギとなる。

 さらに、制度導入当初はそれなりに合理性があった規制も時代の変遷とともにかえって新規産業の勃興を抑え、成長を阻害する要因となっていることが問題視されていた。実際、バブル崩壊後の1995年3月には規制緩和推進計画が閣議決定されている。

 なお、当時の日本経営者団体連盟(日経連)により同年5月に出された「新時代の『日本的経営』」では、少子高齢化という制約がある中でいかに賃金高騰を抑えるかという至上命題に対して、労働形態を3分割(長期蓄積能力活用型(正社員)、高度専門能力活用型(専門職)、雇用柔軟型(非正規))したうえで、雇用柔軟型労働力を活用することにより人件費を抑制することを提案している。

 小泉・竹中構造改革はこうした問題意識や経済界の思惑の中に位置付けられる。

「非正規雇用の拡大」という世代間格差

 実際、バブル崩壊以降、企業の多くがコスト削減を強いられる中で、新卒採用を急激に絞り込み、多くの若者が正社員として就職できないまま派遣社員などの非正規社員として労働市場に放り出される事態が進行した。

 しかも、日本型雇用慣行の弊害もあり、一度正社員になれずに労働市場に出てしまうと、正社員として登用される道は絶望的に狭く険しく、人員削減の必要性が生じた場合、真っ先に切られるのも非正規社員からであった。つまり、日本型雇用慣行の皺寄せは、労働市場に参入するタイミングで景気の悪化に直面した若者世代が一手に引き受けることになる。その代表格が1990年代後半から2000年代前半までに労働市場に出た「就職氷河期世代」だ。

 そうした影響は、若者の貧困化を引き起こし、将来を見据えられない若者による出生率の低下を及ぼしている。つまり、正社員と非正規社員という一種の現代版身分制度は、正規・非正規の賃金格差という直接的要因、少子化の進行による間接的要因から世代間格差を生じさせる。

 非正規雇用の賃金を低く押さえ付けている元凶が小泉内閣の下での改正により製造業にも適用範囲を拡大させた労働者派遣法であり、これを最大限利用しているのが、価格でしか世界と渡り合えない日本企業であり、派遣社員で利益を貪る派遣会社であり、解雇規制で守られている正社員である。

 逆に言えば、正社員の働きが少々悪くても解雇されず高い賃金を貰えるのは、雇用と賃金の調整弁としての非正規社員が存在するからである。

 もし、現在主流のメンバーシップ型雇用のように人に値札がつくのではなく、ポストに値札がついているジョブ型雇用であれば、同じ仕事は同じ賃金か、労働市場の需給バランスを反映し非正規雇用の方が賃金が高くなることもあるはずである。現状のように正社員に比べて非正規社員が一方的に賃金が低いということはあり得ない。解雇規制により正社員が非正社員を搾取する仕組みが日本社会に制度化されてしまっているのだ。

必要なのは、努力した人が報われる社会

 つまり、小泉・竹中構造改革は、手厚く権利が保護された正規雇用の解雇規制を放置したまま非正規雇用の拡大に踏み切ったため、経済界の意図通り、低賃金雇用に雇用全体をシフトさせることで、稀少となる労働力の有効活用とそれに伴う賃上げが実現されず、高い賃金の正社員と低い賃金の非正規社員の間に埋めがたい格差を固定させ、非正規社員の多くが若い世代であることを勘案すると世代間格差をも惹起したのだ。郵政民営化など古い既得権益を打破したものの、人材派遣ビジネスなどの新たな既得権益を作り出すことになってしまっている。

 したがって、日本経済のダイナミズムの回復と世代間格差の是正の二兎を追うためには、解雇規制を撤廃し、労働市場に市場メカニズムを貫徹させることにより、稀少となる労働力の企業間・産業間の自由な移動と自由な価格付けを実現することで、より必要とされる高技能=賃金が高い職が視覚化され、人々がより高い賃金を目指して人的資本を磨き上げることで、賃金水準の底上げと社会全体にもポジティブな影響を与える。

 いつ労働市場に参入したかでその後の稼ぎが概ね自動的に決まる世の中よりも、不断の努力によって稼ぎが決まる、より努力した人ほど報われる社会の方が、これからの時代を担う若者世代にとっては公平な社会だと筆者は考えるが、いかがだろうか?

感想

全体感としては、まったく異論はないかなと思いました。

ただし、これまでも同じようなことが言われ続けていて、

失われた30年だったのも事実かと。

岸田政権下で、今のところ、目立った政策は、18歳未満に10万円配布の

分配政策ですが、記事にあるとおり、ピザ全体(日本のGDP全体)を

大きくしなければ、単なるピザの取り合いになるだけですよね。

そのために、メンバーシップ型ではなく、ジョブ型に移行して、より努力した人ほど

報われる社会が公平な社会ということには異論はありませんが、

具体的にどのようにそれを可視化するのかが問題だと思います。

努力=高技能=高い賃金だとするならば、それをどう可視化して、公平な評価を下すのか?

これが具体化しない限り、絵に描いた餅にしかならないかなと。

今までと同じではないルールを新たに作り出すことができるのか?

革命でも起きない限り、少子高齢化の進む日本では厳しいのが正直なところかと思いました。

以上!

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