その知らせは突然に・・・
ようやく、日常生活を取り戻しつつあった2月初旬頃、T郎は突然上司に呼び出された。
「折り入って話があるのだが、あっちの会議室で少し話ができないか?」
「はい?大丈夫ですが、どうされましたか?」
「詳細は会議室で話すから、とにかく、会議室に行こう。」
T郎は、嫌な予感を抱えつつ、上司とともに会議室へ入った。
「突然のことで、非常に申し訳ないのだが、T郎くんの大阪への異動が決まった。」
「えっ!大阪ですか?」
「ああ、もともと、あるプロジェクトに予定されていた人員に穴が空いて、
どうしてもT郎くんに頼まざるを得ない事情になったんだ。」
「おっしゃることは理解しましたが、ようやく私も日常生活を取り戻しつつあり、
子ども3人もおりますので、なかなか難しいご相談なのですが・・・
あと、仮にそのプロジェクトに対応するとして、
前回のようなプロジェクトではないですよね?」
「ああ、少なくとも前回のようなプロジェクトではないことは間違いない。
異動、単身赴任に関しては、奥様ともよく相談してほしいが、
この場では承諾、というかたちでよいだろうか?」
「えぇ・・・まぁ、仕方がないですね。ただ、妻とよく話をしてから正式な返事、
とさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「分かった。ただし、すでに先方には話もしてあって、
実はすでにプロジェクトも始まっているんだよ。」
「えっ!」
「ま、まずは奥様と話をしてみてくれ。」
事実上の単身赴任、異動の決定であった。
その後、帰宅し、妻に話をしたところ、予想通りの反応であったが、
後日、上司に単身赴任の異動を受け入れる旨、伝えた・・・
T郎の大阪への異動、そして・・・
翌年4月から、T郎は、大阪へ単身赴任でプロジェクト対応のため、
最低二年という会社からの約束で、再度、トンデモプロジェクトに奔走していた。
しかし、蓋を開けてみたところ、低コスト、単納期、人員不足、技術検証不足などなど
プロジェクト計画時点での複数の大きな穴があることが判明した。
(またか・・・)
この時、すでにT郎は、完全に会社への不信感でいっぱいになっていた。
そして、おおよそ10か月程度のプロジェクトをなんとか完了させ、
年明けから1か月程度、たったある日。
(もう、ダメだ・・・)
その後の記憶は曖昧だが、気づいたときには、自宅のインターフォンを鳴らしている自分がいた。
再度、精神科へ・・・
その後のことは、またも記憶が曖昧だが、
妻のK子が、前回のプロジェクトのときと同様に会社へ連絡し、
今後のことについて、話をしてくれているようだった。
そして、1年前と同様、急遽、精神科の当日予約を取ってもらい、診察を受けた。
T郎の病名は「うつ病」であった・・・
~T郎side episode3~ to be continued・・・
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