「物価が上がれば賃金は上がる?成長に取り残された日本の「勘違い」」の感想

はじめに

表題の記事の感想を記載したいと思います。

尚、引用元は以下です。

物価が上がれば賃金は上がる?成長に取り残された日本の「勘違い」

引用内容

● 賃金と物価の国際比較から見える 日本で賃金が上がらない原因

 日本の賃金が長期にわたって上昇していない。安倍政権以降、政府は賃金引き上げの号令をかけ、税の優遇などの支援策もとられてきた。

 なぜこうしたことになってしまうのか?

 実質賃金上昇率と消費者物価上昇率の間には強い相関がある。

 しかし、物価が上がるから実質賃金が上がるのでなく、経済に実体的な変化が起きて実質賃金が上がり、それが物価を引き上げるのだ。

 過去20年間、産業構造も社会構造も変わらなかった日本で、実質賃金が上がるはずはないのだ。

 まずは日本の賃金が上がらない原因を探るために、各国の比較を行なってみることにしよう。

● 実質賃金の上昇率は 1人当たり実質GDP増加率とほぼ同じ

 日本、韓国、台湾、アメリカの賃金、GDP(国内総生産)、物価などについて2000年から20年までの上昇率を見ると、図表1の(1)の通りだ(GDPと物価のデータはIMFによる。賃金のデータはOECDによる)。

 これから、つぎのことがわかる。

 実質賃金は、00年から20年の間に韓国がほぼ2倍になり、アメリカが1.8倍になった。そして、日本は若干低下した。

 実質賃金の増加の推移は1人当たり実質GDPの増加率とほぼ等しい。アメリカでは、実質GDPの増加率のほうが実質賃金上昇率より少し低いが、日米韓の順位は賃金で見てもGDPで見ても変わりない。

 賃金についての国際比較データは入手しにくいが、この関係性を考慮すれば、実質GDPの伸び率を、実質賃金の伸び率の代理変数として用いることができるだろう。

 台湾はOECD加盟国でないので、賃金データ自体が入手できなかった。しかし、実質GDPの増加率が韓国とほぼ同じなので実質賃金の増加率もほぼ同じだろうと推測できる。

● 分配率の変化が 賃金停滞の原因とは言えない

 GDPは、所得分配面から見れば、賃金所得、企業所得、財産所得などからなる。

 1人当たりGDPと賃金の伸びがほぼ等しいのは、分配率が傾向的に変化しているのではないことを示している。

 これは、賃金や利潤が恣意的に決められるものではなく、生産における技術的関係や市場での競争過程を通じて決まることを考えれば、当然のことだ。

 詳しく見ると、日本では実質賃金より1人当たり実質GDPの伸び方が高いので、分配が企業所得の方向に若干シフトしたと言えるかもしれない。ただし、日本の賃金の伸びが他国に比べて大幅に低いのは、これが主要な原因だとはいえない。

 これに対して韓国、アメリカでは、実質賃金の伸びが実質GDPの伸びより高い。これは、労働分配率が上昇したことを示している。ただし、これもあまり大きな差とは言えない。

 なお、GDPのようなデータは人口や就業人口の動向の影響を受ける。しかし、1人当たりGDPや賃金については、それらの直接の影響はないと考えてよいだろう。

● 物価上昇率と実質賃金上昇率は相関 物価が先か、賃金が先か?

では、1人当たりGDPの成長率に見られる各国の差は何によってもたらされたのだろうか?

 とりわけ、日本が顕著に低いのはなぜだろうか?

 まず、物価上昇率との関連を見よう。

 図表1は、1人当たり実質GDPの成長率と物価上昇率の間に強い相関関係があることを示している。

 つまり、日本はどちらも低く、ほかの国はどちらも高い。韓国はどちらも表中で最も高い(ただし、台湾については、物価上昇率はアメリカより低いが、実質GDP伸び率はアメリカより高い)。

 このような相関関係があるために、「物価を上げれば実質賃金が上がる」という考えが出てくる。

 だがこの考えは、正しいだろうか?

 重要なのは、上の相関関係がどのようなメカニズムによって起きるかだ。

 つまり、物価上昇率が高いから実質賃金が伸びるのか、それとも、実質賃金が伸びるから物価が上昇するのか?

 原理的には、つぎの2つのいずれもあり得る。

(1)第1は、何らかの理由で物価が上がり、それを補うために賃金を引き上げる必要があり、賃金が上がるというルートだ。

(2)第2は、生産性が上昇して売り上げが増え、利益が増え、賃金が上がる。その結果、需要が増えて物価が上がるというルートだ。

 実際には、(1)は例外的にしか起きない。

 何らかの外生的な要因によって物価が上昇したものとしよう。

 しかし、それに対応して賃金が上がるとしても、利益などの原資が必要だから限度があるはずだ。実質賃金を一定に保つのが限度であり、実質賃金を引き上げるようなことはないだろう。

 ところが、図表1に見るように、アメリカや韓国では実質賃金が物価上昇率を上回るほどの上昇率を示している。これは(2)のメカニズムが起きていること示唆している。

● 実質賃金が上がるのは 「実体的な変化」があった場合

 実質賃金が上がるのは、何らかの実体的な変化があった場合だ。

 まず考えられるのは資本装備率の上昇だ。

 そこで、投資比率(投資の対GDP比)を見よう。

 図表1によれば、日本は韓国より低いが、アメリカよりは高い。ただし、国別の差はあまり大きくない。

 したがって、資本装備率の差が実質GDPの成長率における差の主要な原因だとは考えられない。

 なお、投資比率は、各国とも時間的に大きく変わっていない。これは労働分配率に大きな変化がないことと整合的だ。

 実質GDPの成長率の差をもたらす最も重要な要因は、新しい技術の登場だ。

 1990年代の中頃にアメリカで起こったIT革命がその例だ。

 また、狭義の技術進歩だけではなく、産業構造や社会構造の変化なども重要だ。

 日本の高度成長は、それまでの農業社会が工業化するという大きな変化によってもたらされた。80年代以降の中国の急速な経済成長もそうだ。

 韓国や台湾でも、80年代以降、社会構造の大きな変化があったと考えられる。

 このような実体的な変化が起きたときに、生産性が上昇する(1人の労働者が生産する付加価値が増える)。その結果、賃金が上がる。そして需要が増え、物価が上昇するのだ。

● 実体的変化の有無を 輸出品の内容で見る

 実体的な変化があったかどうかをデータで確かめられるだろうか?

 アメリカの場合、製造業の比率が低下して、情報処理産業の比率が顕著に上昇した。情報処理産業の賃金が高く、しかも伸び率が高い。これがアメリカ全体の生産性を引き上げている。

 日本の場合にはそのような産業は登場していない。

 韓国や台湾の場合、製造業の比率が依然として高いが、製品が高度化している。

 製造業輸出品に占めるハイテク製品の比率を見ると、日本は20%未満だが、韓国は30%以上で大きな差がある(WTOの資料による)。

 日本の輸出で大きな比重を占めるのは自動車であり、この状況は20年前と変わっていない。韓国では電子製品が多く、その内容が高度化しているのだ。台湾についても、先端的半導体などの比率が高い。

● 技術や産業構造が変わらずに 実質賃金が上昇することはあり得ない

 結局のところ、経済の実体が変化することが重要である。

 そうすれば、実質賃金が上昇し、物価も上昇する。

 従来からの産業構造が変わらず、従来の技術のままで、実質賃金だけが上がるということはあり得ない。

 日本で実質賃金が上昇しないのは、日本の産業構造や社会構造が変わらないことの当然の結果だ。

 日本の場合、中国の工業化によって輸入工業製品の価格が低下した一方で、国内で何も変化が起きなかったので、消費者物価を上昇させる要因がなかったのだ。

 アメリカや韓国や台湾では、経済構造が変化して実質賃金が上昇し、それが物価を引き上げた。

 現在、原油価格の上昇と円安に伴って、輸入価格が上昇している。

 これによって消費者物価がかなりの程度上昇した場合、賃金が上がるだろうか?

 現在では何とも分からないが、大幅な賃金上昇が実現するとは思えない。

 仮に名目賃金が上がったとしても、実質賃金を一定に保つのがやっとだろう。これによって実質賃金が目覚ましく上昇するような事態が起こることはまずないだろう。

 (一橋大学名誉教授 野口悠紀雄

感想

いやぁ、今回も悲しすぎる記事ですね。(´;ω;`)

結局は、物価が上がれば、賃金が上がる、ということはなくて、

賃金が上がるから、物価が上がる、ということですね。

そして、諸外国は、賃金が上がるための要素として、産業構造の変化があったけど、

日本はそれがないために、実質賃金が上がらない(一定に保つのがやっと)という

ことですね。

アメリカで言えば、GAFAをはじめとするIT産業、韓国や台湾は半導体産業、

という新しい産業構造の変化があったけど、日本は目新しい産業がないですからね。

ということは・・・賃金上がらないじゃん!( ゚Д゚)

改めて、このまま単純に日本でサラリーマンを続けることに懐疑的になった記事でした。

以上!

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